『グレオとミレイの雑穀物語』
この物語は、古来から日本人の生活と密接に関わってきた、食の文化財ともいえる雑穀の価値と魅力について、正しく、わかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する、信実のヒューマンドラマです。
雑穀普及に取り組む一般社団法人日本雑穀協会から、雑穀市場の健全な発展を目的として、雑穀専門家、関係機関、関連する企業・団体等の協力をいただきながら配信しています。
登場人物紹介
グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞とスポーツ観戦。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ひそかにYouTuberとして成功することを考えている。
ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強い。グレオとは、カフェチェーンのバイト仲間。
『第18話』宇宙雑穀とアマランサス
グレオ
「ミレイちゃん、宇宙雑穀って知ってる?」
ミレイ
「それって、山形県小国町の雑穀の種子が最後のスペースシャトルで宇宙に行って、戻ってきてから栽培した雑穀のこと? 2010年から10か月間くらい、宇宙ステーションで保管されていたと思う。」
グレオ
「そのとおり!最近、ホリエモンロケットのこと知ってから宇宙に興味がわいてきて、調べてたら宇宙雑穀って出てきたんだ。」
ミレイ
「そう、宇宙から帰ってきた種子で栽培された雑穀を使って、宇宙雑穀クッキーや宇宙大豆味噌など、いろいろと商品化されていたのよ。以前は、雑穀アドバイザーの奈美悦子さんも観光大使をつとめていて、雑穀のいろいろな商品が小国町の特産品になっていたと思うわ。」
グレオ
「そうなんだね、雑穀も宇宙の時代なのか。僕も宇宙に行きたいなあ。丸い地球を見たいなー。宇宙食だけでも食べたいなあ。そうだ、アマランサスってNASAが認めた宇宙食だよね。検索するとたくさん出てくるよ。」
ミレイ
「それは、、、残念ながら違うのよ。誤った情報がテレビで放送されちゃって、ネット上で拡散されてしまったのよ。それで、真偽を確かめるためにNASAに確認したら、“アマランサスを宇宙食に採用したり、推奨した事実は一切ない” っていう回答だったらしいわ。」
グレオ
「えーっ、そうなの? 間違いなの? 訂正ってないの?」
ミレイ
「う~ん、どこかで訂正はあったかも知れないけど、一度出てしまった誤情報は、簡単に元に戻らないのよ。」
グレオ
「そうか。」
ミレイ
「だから、間違った情報を改めるには、コツコツと正しい情報を発信し続けて、長い年月をかけて、情報の上書きをしていく必要があるの。テレビの影響力って大きいから、なかなか大変だけど、健全なアマランサスの普及のためにやっていかないと。。」
グレオ
「なるほど、でも何で、誤った情報が出てしまったんだろう?」
ミレイ
「それはね、同じヒユ科の雑穀、キノアの情報と混同していると思われるの。」
グレオ
「そーなんだ、アマランサスとキノアって似てるの?」
ミレイ
「そうよ、比較表をまとめたので見てくれる? アマランサスとキノアって、似てるけど、違う作物なので、混同してはいけないのよ。」
グレオ
「あれっ、NASとNASAって、似ているね。」
ミレイ
「そう、アメリカ科学アカデミーの “NAS” では、アマランサスもキノアも両方とも有用作物として評価しているの。それで、一字増えたアメリカ航空宇宙局の”NASA” と勘違いされることもあるみたいよ。もちろん、きちんとした学術論文では間違われないけどね。」
グレオ
「なるほど、でも、ちゃんと調べれば、間違いだってわかるのに、何で使われ続けてしまうんだろう? そこが問題だね。」
ミレイ
「それはね、”NASAが認めた宇宙食” っていう表現は、中身のことを語らなくても、一瞬でアマランサスってスゴイ作物なんだって、印象に残るからじゃないかしら。アマランサスって名前も、宇宙の植物っぽいしね。だから、そのインパクトのある表現をメディアやネットで見つけると、よく確認しないで、そのまま簡単に引用されてしまうんじゃないかなって思うの。」
グレオ
「なるほどね。雑穀のイイコトたくさん書いているサイトであっても、明らかな誤情報を放置しておくと、他の正しい情報までも信用されなくなる可能性もあるよね。」
ミレイ
「そうなのよ。だから、正していただけるように、コツコツと情報発信につとめているのよ。」
グレオ
「地に足をつけて、正しい発信をコツコツとだね。」
《解説》
アマランサスには、カリウム、鉄、亜鉛、葉酸のほか、他の雑穀には少ない必須アミノ酸のリジンを多く含み、脂質には免疫調節機能や抗酸化作用のあるスクアレンが多いなど、優れた栄養価があることがわかっています。
それら価値ある情報を正しく伝えると共に、”宇宙食として推奨している” という誤った表現は使用されないようお願いいたします。