『グレオとミレイの雑穀物語』
この物語は、古来から日本人の生活と密接に関わってきた、食の文化財ともいえる雑穀の価値と魅力について、正しく、わかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する、信実のヒューマンドラマです。
雑穀普及に取り組む一般社団法人日本雑穀協会から、雑穀市場の健全な発展を目的として、雑穀専門家、関係機関、関連する企業・団体等の協力をいただきながら配信しています。
登場人物紹介
グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞とスポーツ観戦。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ひそかにYouTuberとして成功することを考えている。
ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強い。グレオとは、カフェチェーンのバイト仲間。
『第27話』腸内細菌を育てて免疫力向上
グレオ
「やった!大好きなカップ焼きそばから、もち麦入りの新商品出たよ。」
ミレイ
「あらっ、もち麦入りなのね。麺に練り込んでるの?」
グレオ
「いや、トッピングにフリーズドライもち麦ってのが付いていて、一緒に湯煎して混ぜ合わせて食べるんだ。でも、もち麦って、なんの麦だろう?」
ミレイ
「もち麦は、もちもちした食感のもち性オオムギのことよ。ほら、押麦ってスーパーで売ってるでしょ、あれってうるち性のオオムギなの。もち性やうるち性に限らず、食物繊維がオオムギには多いのよ。特に、β-グルカンっていう水溶性食物繊維ね。」
グレオ
「食物の繊維か。もしかしたら、これも何か免疫と関係あるの?」
ミレイ
「あるわ、おおありよ。水溶性食物繊維は、私たちの腸の中で働いてくれる腸内細菌のえさになるのよ。」
グレオ
「えさ? 僕、菌を飼ってるつもりないけど。」
ミレイ
「うふっ、意識しなくても、腸内細菌は、私もグレオくんも、腸の中にたくさんいるのよ。まあ、これ見てくれる? 水溶性食物繊維の食材比較よ。オオムギが多いけど、もち麦は、もっと多い品種もあるのよ。」
※ 日本食品標準成分表2015年版(七訂)から引用 /追補2018準拠
グレオ
「ほー。」
ミレイ
「その腸内細菌の状態は健康に直結してるってことがわかってきたのよ。それで、その細菌はたくさんの種類がいて腸の中で集団で存在しているの。それを腸内細菌叢っていうんだけど、別名で、腸内フローラっていうのよ。腸の中のお花畑ね。この腸内フローラを良い菌で美しくすることが、免疫にはとても大事なことなのよ。」
グレオ
「そーなんだ、集団でいるんだ。その細菌って、腸の中でどのくらいの数が集まっているの?100とか200、それとも、1,000とか?」
ミレイ
「ぜんぜん違うわよ、腸内細菌の数は、約100兆個なのよ!」
グレオ
「ひっ、ひゃくくく、ちょう、、」
ミレイ
「それで、ヒトの免疫細胞の約6~7割は、腸の中で働いているの。体の構造上、皮膚とともに、腸もいろんな外敵にさらされていて、防御が必要なのよ。ここで、食べものとかと一緒に、口を通して体内に侵入してきた細菌やウィルスをやっつけているの。」
グレオ
「そうか、身体の中も敵と向き合っているんだね。」
ミレイ
「そうよ。その腸で働く免疫細胞は、良質な腸内細菌によって強くなるの。例えば、ある腸内細菌は、短鎖脂肪酸っていう酢酸を産生して感染を抑制するなど、腸管の上皮バリアの強化や免疫システムに関与している働きがあるの。腸内細菌と免疫細胞、腸管の上皮細胞は、それぞれ協調して、病原体微生物の感染をがんばって防御してくれているわ。」
グレオ
「へー。」
ミレイ
「だから、腸内細菌の働きを良くし、免疫細胞の活性化につながれば、免疫力を高めることにつながるのよ。それには、腸内フローラが大事なのよ。」
グレオ
「なーるほど。雑穀食べて腸の中でお花をキレイに咲かすと元気になるんだね。」
《解説》
腸内細菌叢の研究、特に腸内細菌叢は今ホットな研究テーマです。腸、特に大腸の腸内細菌叢は “もうひとつの臓器”といわれ、ヒトの健康に直結する、とても重要な役割を担っています。免疫細胞の多くが集まり、腸内細菌と連携しながら様々な活動を行いますが、腸内細菌の活動に必要な水溶性食物繊維は、オオムギ、もち麦を中心として、雑穀には豊富に含まれています。
《参考書籍》
もっとよくわかる!腸内細菌叢:健康と疾患を司る”もう1つの臓器” 福田真嗣 編著,羊土社
カラー図解 免疫学の基本がわかる事典 鈴木隆二 著,西東社
《参考サイト》
麦ラボ O-Mugi Lab. 代表者:青江誠一郎(大妻女子大学家政学部食物学科教授)