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〚雑穀物語9〛生物多様性とアワの品種


『グレオとミレイの雑穀物語』
この物語は、古来から日本人の生活と密接に関わってきた、食の文化財ともいえる雑穀の価値と魅力について、正しく、わかりやすく広めるために生まれた、雑穀の真実に挑戦する、信実のヒューマンドラマです。
雑穀普及に取り組む一般社団法人日本雑穀協会から、雑穀市場の健全な発展を目的として、雑穀専門家、関係機関、関連する企業・団体等の協力をいただきながら配信しています。


登場人物紹介

グレオ
神奈川県出身、文学部の大学2年生。趣味は映画観賞とスポーツ観戦
。スマホが離せない少し優柔不断な次男坊。ひそかにYouTuberとして成功することを考えている。
ミレイ
料理と読書、そして雑穀が大好きな、東北の中山間地出身の女子大家政学部の3年生。雑穀エキスパート認定者。責任感が強い。グレオとは、カフェチェーンのバイト仲間。

『第9話』生物多様性とアワの品種

レイ
「グレオくん、濡れ手でアワって言葉知ってる?」

グレオ
「もちろん。濡れた手で粟(アワ)をつかむと、びっしりと手いっぱいにアワの粒がつくので、そこから、大した苦労もしないで多くの利益を得ることっていう意味のことわざだよね。ぷくぷく泡のアワじゃないこと知ってるよ。」

ミレイ
「さすが、そのとおり!」

グレオ
「あったりまえだよ。僕、一応文学部。ことわざは試験勉強でかなり覚えたね。」

ミレイ
「それは、失礼しました(笑)。実はね、私、以前につくばにあるジーンバンクっていう、貴重な遺伝資源を保管している研究機関の一般公開日に行ったことがあるの。その時に、アワの説明コーナーがあって、濡れ手でアワの体験もしていたの。それで試してみたら、本当にビッシリとアワが手にくっついて、びっくりしたのよ。」

グレオ
「へ~、おもしろい。ところで、そのジーンバンクには、アワの種子も保管してあるの?どのくらい?100か200ほど?」

ミレイ
「ぜんぜんもっと多いよ。アワって品種がたくさんあって、ジーンバンクには、現在1,405種類も保管されているみたいなの。キビで340種類、栽培用のヒエで249種類だから、その多さがわかるでしょ。品種の多いイネは、水稲だけでも2万種を超えているけどね。」

グレオ
「すごいねー。」

ミレイ
「同じアワでも、品種が違えば、穂の形も、実の色もいろいろなの。アワの場合、その形から、キツネの尻尾って意味のFoxtail milletが英語名となっているんだけど、先端が割れていて猫の足のようになっているものや、リスの尻尾やトラの尾っぽのようなアワなど、いろいろな形があるのよ。」

グレオ
「いろんな形の尻尾、何か楽しいね。」

ミレイ
「そうそう、それで、千葉大学教育学部の先生方の研究でも雑穀の生物多様性に注目して、『ジーンバンクの雑穀コレクションの農業形質の特性評価』という論文を発表されたの。いろいろな雑穀の特性を見ているんだけど、その中でも、特にアワの多様性が教材に適しているとのことで、中学校の授業にも使われているのよ。2018年に論文となって、教育分野でも注目されていたわ。」

グレオ
「なるほど、そうなんだ。よーし、スマホでアワの品種名調べてみるよ。ピコピコ。」

ミレイ
「たくさん出てくるでしょ、何か、グレオくんにとって興味ある名前見つかった?」

グレオ
「あったー、ムコダマシ!おもしろーい。」

ミレイ
「そう、ムコダマシ。雑穀研究会の研究誌には、日本雑穀協会会長で日本大学生物資源科学部 倉内伸幸教授の研究室の先生方から『産地の異なるアワ品種ムコダマシの農業形質について』という論文が発表されているの。アワの世界では、けっこう有名な品種名で、群馬や神奈川、奈良、広島、愛媛、宮崎など、同じ品種とは限らないけど、日本各地に同じ名前のアワが作られていたことがわかっているのよ。白い色のアワで、ほとんどがモチアワね。」

グレオ
「へ~、有名なんだ。どうしてそんな名前なんだろう?」

ミレイ
「昔は、お米って貴重な換金作物で、お金に換えていたの。そのため、一般庶民は、お餅を作るときに、モチ米を使うことができず、白い品種のモチアワを使ってお餅を作っていたのよ。それで、お婿さんを迎えるときに、うちにはモチ米でお餅を作ることができる、たくさんの田んぼをもつ裕福な家ですよ、と勘違いしてもらうのに使われたので、ムコダマシっていう名前が付いたらしいわ。」

グレオ
「うわー、そういう意味だったんだね~。」

ミレイ
「まあ、本当のところは、騙すというより、大切なお婿さんが間違える可能性があるほど、白くて粘り気のあるアワ、という点を強調した結果からついた名前ではないかって、論文では考察されていたわ。よーく見ると違いが分かるけど、少し暗がりだったら、ほんと騙されるかも。でも、アワの方が本当はおいしくて栄養が多いので、お婿さんも騙されて正解かもね(笑)。」

グレオ
「ははは、じゃあ、今度は、ヨメダマシって品種はないか、探してみようっと。」

ミレイ
「そんなのあるわけなーい!お嫁さんは騙しちゃダメなの!!」

グレオ
「わ、わかったよ。。」

《解説》
アワは、かつて日本各地で2,000品種くらい栽培されていたとの記録があります。”ネコアシアワ” “虎の尾” “大槌10” など、様々な名前がありますが、すべてが違う品種でもないようです。ムコダマシのように、同じ名前で農業形質が異なるもの、また、違う名前でも特性が近いものなどもあります。日本各地にアワ栽培が広がると共に、名前もその土地で付けられていき、在来化したアワの品種が日本各地で見られます。ヒエと共に、縄文時代から栽培されてきた日本最古の穀物のアワは、その生物多様性が改めて、各分野で注目されています。

 

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